同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。
互いの想い #1

 少し前に歩いたルートを逆さに辿って乗り込んだエレベーターが脳外の医局があるフロアに到着したことを階数表示パネルが仄かに灯す。

 同時に理性が後から追いかけてきた。

 何も考えずに突っ走ってきたものの、窪塚は仕事中だろうし、どうしたものか。

 こういう時に限って、昔から、見せかけだけのカタブツ女。なんて言われてきた自分の嫌な部分が邪魔をする。

 こんな自分は嫌いだ。

 けど窪塚だけは、こんな自分のことを好きだと言ってくれる。

 気が強くて、頑固で、生真面目で、ちっとも可愛くなんかない、こんな自分のことをなにもかも全部受け入れてくれる。

 私だって窪塚に負けないくらい、どんな窪塚のことも好きだ。

 見かけは、イケメンだし、ポーカーフェイス気取ってて、隙なんて全然なくて、何もかも完璧に見える窪塚。

 けど口だって悪いし、不器用なとこもあるし、結構ヘタレだし、料理なんて全然できないし、朝食代わりにプロテインばっかり飲んでるような、筋肉バカなところだってある。

 そういうところも全部全部ひっくるめて窪塚の何もかもが好きだ。

 窪塚のためならなんだってできるし、したいと思う。

 優君のために外科医を目指していた私の果たせなかった夢を叶えるためにも、

『絶対親父に負けないくらいの脳外科医になって頂点に上り詰めてみせる。だからそれを傍にいて確かめて欲しい』

専門医になったとき、そう言ってくれた窪塚のためにも、今行動を起こさなかったら、私だって後悔することになる。

 ーー窪塚の夢は私の夢でもあるんだから。

 こんなところでぐずぐずしている場合じゃない。窪塚に速くこの気持ちを伝えなくちゃ。

 窪塚への想いが理性に打ち勝ちエレバーターから飛び出した私の視界には、あたかも神様の思し召しのような抜群なタイミングで、医局から出てきたばかりの窪塚と樹先生の後ろ姿が映し出された。

 シーンと静まりかえった廊下には私の駆け寄る靴音が響き渡っている。

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