政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「慎也さん……?」
「はい」
呼べばいつものように返事をしてくれるけれど、何かが違う。
──分かった。目線が合わないのだわ。
いつもなら、浅緋が戸惑うくらい、真っ直ぐに浅緋の顔を覗き込んで微笑んでくれる片倉なのに。
「慎也さん」
エレベーターの中で繋いだ手とは別の方の手で浅緋は片倉の腕をきゅっと握って、片倉の顔を覗き込もうとした。
それをすうっと逸らされる。
「見ないでください。こんな顔、あなたには見られたくないんだ」
そうして、手を引かれた浅緋は片倉の胸に抱き込まれる形になって、なおさら顔を見ることはできなくなったのだった。
「はい」
呼べばいつものように返事をしてくれるけれど、何かが違う。
──分かった。目線が合わないのだわ。
いつもなら、浅緋が戸惑うくらい、真っ直ぐに浅緋の顔を覗き込んで微笑んでくれる片倉なのに。
「慎也さん」
エレベーターの中で繋いだ手とは別の方の手で浅緋は片倉の腕をきゅっと握って、片倉の顔を覗き込もうとした。
それをすうっと逸らされる。
「見ないでください。こんな顔、あなたには見られたくないんだ」
そうして、手を引かれた浅緋は片倉の胸に抱き込まれる形になって、なおさら顔を見ることはできなくなったのだった。