エレベーターを降りた時、抱きしめるのは解いてくれたけれど、部屋の中に入ったら、またぎゅうっと抱きしめられてしまった浅緋だ。

「慎也さん」
 嫌ではない……けれど、今までの片倉では考えられない行動なのだ。

「僕では、ダメですか?」
「え?」

 片倉ではダメか……なんてどういうことなのだろうか。

 そんな風に思ったことはないし、むしろ触れられることは片倉しかダメなのに。
 片倉は浅緋をぎゅうっと抱いたままだ。

「祐輔から……電話があったんです」
 浅緋を強く抱いたままなので、片倉の声はくぐもって聞こえる。

「祐輔さん?」
「槙野です」
「はい」

「浅緋さんの食事の席に、男性が同席している、お前達は大丈夫なのか、と」
 浅緋は驚いて顔を上げる。

 けれど、その頭をきゅうっと抱き込まれてしまったのだ。
 その閉じ込められた胸の中で必死に浅緋は伝える。

「それは、知らなかったんです。お話はそれはしましたけど、すぐに槙野さんがいらっしゃったし」