敏腕パイロットとの偽装結婚はあきれるほど甘くて癖になる~一生、お前を離さない~
シンデレラは飛行機フェチ Side月島
パンプスは履くものだと思っていた。
しかし、持って走るという方法があるのを初めて知った。

勢いよく駆けてきたグランドスタッフが、脱げたパンプスに視線を送り思いきり顔をゆがめた瞬間、周囲にいたキャビンアテンダントは一斉に失笑を漏らした。

ここが空港ではなく制服を着ていなければ、腹を抱えて大笑いしていたに違いない。

さらには、脱げたパンプスはあきらめ、もう片方を持って再び走りだした彼女に「なにあの人」「正気?」という陰口が広がった。

しかし俺は、そのグランドスタッフに見覚えがあり、彼女らしいなとにやついてしまった。

搭乗時刻が迫っているのにゲートに現れない乗客を捜しているに違いない。

こうした場合、どこかのベンチで寝てしまっていたり、免税品を買うのに夢中になっていたりするケースが多い。

なかなかすさまじい勢いだったが、そろそろゲートクローズになる便がある。

< 35 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop