「あかり」

 名前を呼ばれてぴくっと身体が跳ねる。はい、と返事をしながらスマートフォンをサッと後ろに隠す。

 気が付けばまた求人サイトを見ることに夢中になっていたらしい。顔を上げるとダイニングテーブルに何かの資料を広げて仕事をしていた響一が、不機嫌な顔でこちらを見ていた。何度か声を掛けられていたことに、長時間気付けなかったのだろう。

「あ、ごめんなさい……」

 きっとコーヒーのおかわりだ。響一はコーヒーぐらいなら自分で用意する人だが、ついでにあかりにも飲むかどうか訊ねてくれていたに違いない。

 それなら自分が用意しよう、と膝に掛けたブランケットを退かす。しかしあかりが動き出す直前に、立ち上がった響一が

「……いい加減にしろよ」

 と地を這うような低い声を出した。

 そしてそのままあかりが座るソファに近付いてくる。

 隣に座って休憩するのだろうか、という予想は大きく裏切られる。響一は立ち上がろうとする動きを妨げるように、あかりの前に仁王立ちになった。

「気付かれてないと思ってるのか?」
「な、何が……ですか?」

 質問の言葉に、内心どきりとする。