8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~2
双子の能力とリーフェの力
 フィオナは後宮に戻ると、ソファで寝ているドルフを起こした。

「ドルフ、リーフェはいない?」
『リーフェならずっと戻っていないが?』
「アイラとオリバーの能力について、相談したかったんだけど」

 先ほどの出来事を、ドルフに説明する。ジャネットのそばに影のようなものが見えたこと。アイラはそれがよりはっきり見えていたようだったこと。そして、オリバーと手をつなぐことにより、フィオナにも少し見えるようになったこと。
 すべて聞き終えたドルフは、誰もいないのを確認すると、狼の姿になった。

『気になるのなら、リーフェに聞きに行くか?』
「え?」
『たまにはふたりで抜け出すのもいいだろう』
「……そうね!」

 ドルフは時を止め、フィオナを背中にのせ、空を駆ける。妊娠、出産をし、体調を崩してしばらく後宮にこもっていたから、こうやってこっそり抜け出すのは久しぶりだ。

「久しぶりね! 気持ちいい!」
『ようやく元気な顔になったな』

 ドルフの声が優しくて、フィオナは素直な気持ちになっていく。

「顔に出てた?」
『いいや。お前は子供を産んでから少し我慢をしすぎだ。もっと甘えてもいいだろう。オスニエルならば逆に喜ぶんじゃないのか』
「そうかもね。でも、私、心配されたいわけじゃないのよ」
『……?』
「信頼されたいの。だって私は王太子妃になったのだもの。夫の役に立ちたいわ。だから、私の立場を利用してできることがあるなら、多少の危険があってもやりたいのよ」

 孤児院のことを認めてくれて、信用してくれてうれしかった。大嫌いだったはずのオスニエルと一緒にいて楽しいと思えるようになったのは、彼がこの国でのフィオナの働きを認めてくれたからだ。

「ジャネット様にとって、オスニエル様は縁談を破棄した当事者だわ。だから、彼相手に素直にはなれないと思うの。だったら私から聞いてみたほうが、本当の気持ちを話してもらえるかもしれない。そう思わない?」
『逞しいな。お前は。……ほら、ついたぞ』
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