偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「ねえ真理愛、聞いているの?」
後方から投げかけられる言葉に無性にイラッとした。

お母さんの性格はわかっているはずなのに、最近の私は一言一言が気になってしまい喧嘩になることが増えている。
お母さんは「最近の真理愛変だわ」て言うけれど、確かに今までだったら聞き流せることがしゃくにさわって仕方がない。
小さなことにイライラする自分を自覚するたびに、このままお母さんに似ていくのかもしれないと少し不安になったりもする。

「ねぇ真理愛、今日は天気も悪いし家にいたらどうなの?」
玄関まで追いかけてきて言い続けるお母さん。

天気が悪いと言ったって、雨が降っているわけでもない。
ただ曇っていて降水確率が高めってだけで、お母さんの言うことは完全に言いがかり。そう思ったら私の中の何かがプチッと切れた。

「うるさいわね、いちいち干渉しないでよ」

決して大きな声を出したつもりは無い。ただ放っておいてと言いたかっただけ。
しかし、私の一言がお母さんのスイッチを押してしまったらしい。

「真理愛-ッ」
ものすごい叫び声。

お母さんは気づいていないかもしれないけれど、玄関ホールって家の中でも声が響く場所。ましてや高城邸のような大きな家ではその反響も半端ない。
あっという間におじさんの足音が聞こえてきた。
< 135 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop