偶然から始まった恋の行方～敬と真理愛～
ごめんな真理愛。
俺にはお前の悲しみを代わってやることはできない。
こうやって抱きしめてやることしかできないんだ。

真理愛から伝わる温もりが心地よくて、俺は動くことができないでいた。
できることならこのまま時間が止まってほしいと思うのは俺のエゴ。
わかっていても、俺は真理愛が愛しかった。



「ねえ敬さん」
腕の中に納まっていた真理愛が俺を見上げたのはどのくらい時間がたった後だろう。

「どうした？」
俺もやっと現実に引き戻された。

「今日、泊ってもいい？」
「え？」

この言葉を実は予感していた。
もしかしたら真理愛は、そう言い出すんじゃないかと思っていた。
その時俺はなんて答えるんだろうと考えながら、答えが出ないままここまで来てしまった。

「ダメ、かな？」

女の子は本能的に男を操る術を持っている。
こんな風にかわいく言われれば、よほど嫌いでない限りは頷くしかない。

「いいよ」

常識ある大人として、言ってはいけない言葉を俺は口にしてしまった。
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