偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
試練

忘れたい過去…敬

「おはようございます」
いつものように挨拶をして、大学病院の救急外来勤務に入る。

「お、敬。おはよう」
ちょうど呼ばれてきていたらしい太郎もそこにいた。

「朝から呼ばれたのか、大変だな」
「まあな」

小さな子供ははっきりと症状を言ってくれないし、下手するとずっと泣いているだけで、なかなか状態の把握ができない。
そのせいか、他の科に比べると小児科が救急外来へ呼ばれる頻度は高いように思う。

「当直だったのか?」
こんな朝早くからここにいるってことは泊りだったんだろうと予想した。

「イヤ、もともとは違ったんだが、急な欠員が出て急遽呼ばれたんだ」
「へえー」
それはお気の毒に。

医者だって人間だから具合が悪くなる時もある。
仕方がないとは思うが、そういう時に呼ばれるのは俺たちのような中堅医師。
研修医じゃあ仕事にならないし、だからと言って上の先生たちが出てきてくれるはずもない。

「損な役回りだな」
「本当だよ。昨日はただでさえ妹が熱を出して大変だったのに」
「えっ?」

妹って・・真理愛が熱を?
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