初めてその話を台本で目にしたとき、既視感しか覚えなかった。まるでその夫婦が玲二と私のようで。
 唯一脚本とは異なるのが私は手酷く扱われていることもないし、むしろ玲二に好意を覚えている点だ。

「ヒロインがお前ってわけだな。……で、相手役は誰なんだ?」

「そっ、れは……」

 正直脚本だけならばここまで戸惑うこともなかっただろう。けれど、1番の原因はそこではなく。

 私は意を決して口を開いた。

「…………遠藤朝陽です」

「遠藤、だと?」

 急激に部屋の温度が下がったような気がした。玲二の瞳は鋭さを帯び、その容貌には不機嫌の色が見て取れる。

 以前、荷解きの際と同じような状況だった。