『月ノ島専務、奥方の所属している劇団に関わる過去の話、こちらにまとめておきましたのでここに置いておきます』

『ああ』

 俺は部下の言葉に頷いたあと、キーボードを叩く手を止めた。チラリと視界に紙束が入り、おもむろに手を伸ばす。

 そこには『月ノ島こはる(旧姓:花宮)の所属する劇団スペードについての報告書』と記されており、ぱらぱらと紙束を捲る。劇団の誕生した月日や客の動員数、今まで行われた公演の演目等、様々なことが丁寧にまとめられている。

 ふと、視界に入ったのは『ここ5年の間に退団したもの』という欄だった。顔写真付きで掲載されており、確認するように名前を見ていくと途中で顔を顰めた。数ヶ月前にこはる自身から聞いた名前だったからだ。