目の前の出来事が信じられなかった。
 あいつが裏切ることなんて一ミリも考えていなかった。それだけに俺の心を深く傷つけたのだ。

「昨日も現場に訪ねたときめちゃくちゃ驚いてたが、今日もおもしろい顔するんだろうな」

 俺は今日もうまく仕事を片付けることが出来たのでこはるの元へと駆けつけることにした。
 この映画制作には月ノ島グループも多額の出資をしており、自由に現場への出入りは許されていた。それに、こはるは月ノ島プロダクションの新人女優だ。彼女のプロモーションも担当する上で、映画の出来は多く関係がある。

 連日撮影現場に赴いてしまうのは、こはるの相手役かあの遠藤朝陽だからというのも関係していた。
 昨日の遠藤のこはるに対する目。あれはおそらく未だ女としてこはるのことを見ており、円満に別れたと言っていたが未練たらたらなのが伝わってきた。