この日、私は愕然とした面持ちで目前の男を見つめていた。手渡された手紙をぐしゃりと握りつぶしながら。

『劇団スペード解散のお知らせ』
 
 奥歯をぎりっと噛み締め、俯いた顔を上げる。

 私の所属している劇団スペードは15年前に発足した独自の劇場を持つ小さな劇団だ。
 月に一度という頻繁に催される舞台が売りであり、劇団が誕生した当初からの固定ファンがいるような地元の人にも愛されている劇団だった。団員同士の深い絆によって作られる演劇公演は毎回大盛況とはいかないものの、知る人ぞ知ると演劇界ではそれなりの評判を得ていたはずなのに。