「えっ!? 社長っ、あのパン屋さんと付き合うことになったんですかっ!?」

 総務の田岡(たおか)美代子(みよこ)に素っ頓狂な声を上げられて、実篤(さねあつ)は思わずその口を塞ぎたくなる。

 そんな田岡を制するように経理の野田(のだ)千春(ちはる)がニマニマしながら言う。

「美代子ちゃん、そんな驚かんであげて。社長からはいつも(いついき)あのパン屋さんのことが好きで好きで堪らんのじゃ〜!っちゅうオーラが出よったじゃないのぉ〜」

「まぁそうなんですけどっ。まさかOKもらえるじゃなんて思わんじゃないですかっ」

(こら、田岡さんっ! いくら何でも言い過ぎじゃろ! 減俸に処すぞ!?)

 とか冗談半分に思ってしまった実篤だったけど、実際自分自身半信半疑な部分も大きかったので突っ込まずにおいた。

(誰か言い過ぎじゃって、とか()うてくれんじゃろうか)

 なんて期待していたら、たまたまその場に居合わせた営業の宇佐川辰巳(うさがわたつみ)が「えっ」と声を上げて。
 実篤は(男同士じゃし、宇佐川くんが味方になってくれるじゃろうか?)と思ってしまった。

 だが、次いで続けられた言葉にそれは大きな思い違いだったと現実を突きつけられる。

「マジっすかぁ〜! 社長ぉ〜、俺、あの子ええなぁ思いよったんに!」