「これ、店長から」

ハル氏は慣れた手つきでテーブルにドリンクを置いてくれる。
虹色のジュースだった。

「これって……」

「ゲーミングドリンクでございます」

「なぁ、これ俺たちが飲んだら『ヤマト選手おすすめ』『マンダム選手おすすめ』とか書かれるんじゃないか……」

「絶対書かれるでござる」

「わ、悪い人じゃないんだけどね……!」

ハル氏は店長をフォローすると、足早に厨房に戻っていった。

まぁ、ハル氏のバイト先だからいいでござる。

それよりも、今日のトレーニングの目的を確認しないと。

「……12月の大会に向けて、調子はどうでござるか?」

「この1年、REVO(レボ)に向けてひたすら鍛えてきたから、自信はそれなりにある。いつも通りにするだけさ」

REVOとは、Revolution championship(レボリューション・チャンピオンシップ)のこと。

日本最大の格闘ゲームの大会。

ヤマト氏は去年のプロだけの大会・朱雀杯ですでに出場権が与えられている。
まっすぐにREVOに意識を向けて努力をしてきたのは、拙者でもわかる。


REVOで優勝した場合……REVOよりさらにうえの、世界大会への権利が手に入る。

きっと、ヤマト氏はその権利を手にするだろう。

「応援するでござるよ」

「ありがとう。マンダムがワドウ使いで助かるよ。最近海外選手でもワドウ使いが増えてきてさ」

日本大会よりさらに先の海外選手のことまで考えている。
とても年下とも思えない意識の高さでござる。


「ところで、ハル氏の事務所はどうするんでござるか?」

「いや、春菜はまだ考えているって」

「そうでござるか。まぁ、まだ高校2年生。急ぐこともないでござる。ただ、ハル氏はすでに実績もあるし、事務所に入って活動でもしたらここのバイト代より遥かに高収入になるとは思いますが」

「それは確かに……ただ、春菜のファンが増えすぎるのも……」

「ヤマト氏、見かけによらず嫉妬深いんですな」

「ち、ちがっ……そういうマンダムはどうなんだよ!?」

「拙者は恋愛などしてませんゆえ。あえて言うならルナが今の彼女でござる」

「ルナってツバキさんのメインだろ? あ! もしかしてマンダムってツバキさんのこと――」

「そんなんじゃないでござる! だいたい、拙者とツバキ嬢では釣り合わなすぎるというか……」

話の流れが変な方向に向かっていってる。
拙者、どうも自分の恋愛の話は苦手でござる。

「春菜がツバキさんと仲いいらしいから、とりもってもらう?」

「けっこうでござる!」

まったくヤマト氏は……。

でも、拙者も先のことは考えないといけない。

ヤマト氏にはまだ話していないが、実はStarToulからスカウトが来ている。

卒業までもう少し、拙者がゲームを通して何がしたいか、もう少し考えてみよう。