eスポーツ!!~恋人も友達もいないぼっちな私と、プロゲーマーで有名配信者の彼~
第10話:Revolution championship
「じいちゃん、意識戻ったよ。まだ喋り方はぎこちないけど、リハビリを頑張ったら家にも帰れるって」

「ほんと⁉ 良かった……」


私達は都内のカフェに来ていた。
ヤマトのお見舞いの帰りに合わせて、待ち合わせたのだ。

「おじいさんの容態が落ち着いたら、私にも挨拶させてね」

「もちろん。今日春菜のことを話したら『今はまだ会えん。もう少しシャンとしてからじゃないと』って緊張してた」

「ふふ、そんなの気にしなくていいのに」

「そういえばさ、俺がプロゲーマーになったのってじいちゃんの影響が大きいんだ」

おじいさんの影響? ヤマトのおじいさんもゲーム好きなのかな?

「母さんが出ていってじいちゃんとふたりだったろ。じいちゃん、孫にどう接したらいいのかわからなかったんだろな。ひとりで寂しそうにしている俺に、やまほどゲーム買ってくれたんだよ。」

ヤマトはそう言って笑う。

「だからずっとゲームが遊び相手だった。おかげで、今があるんだけどな」

捉えようによっては切ない話かもしれない。
でも、おじいさんのヤマトに対する愛情や、ヤマトのゲームに対する熱意は本物なんだよね。

「本当に、いいおじいさんだね」

「春菜ならそう言ってくれると思ったよ」

嬉しそうなヤマトを見てほっとした私は、頼んでいたスコーンを頬張る。

おいしい……!
ストロベリーミルクティーとよく合うんだよね、これ。

ヤマトはスコーンを食べている私の顔を見て、幸せそうな表情を浮かべていた。

「……ヤマトも食べたい?」

「いや、スイーツを食べてる春菜の顔って本当に可愛いなぁって」

「――っ!」

急に恥ずかしいことを言われたもんだから、スコーンを吹き出しそうになる。

「もう、こんなところで言わないでっ」

「だって本当なんだもん」

ヤマトは口を尖らせて、気にしてない素振りを見せる。

イケメンなのに、可愛くてずるい。

「あとさ、じいちゃんにREVOも勝ってこいって言われた」

……昔の私なら、きっとわざと負けてしまおうかと考えただろう。

「そっか。難しいけど頑張るしかないね。なにせ、私も出場するんだから簡単にはいかないよ。ヤマトには悪いけれど、マカロンがさらに仕上がってきてるし」

「だよなぁ。一番春菜が怖いよ」

怖いと言いながらも、ヤマトは嬉しそうだ。
私達は合間を見てはトレーニングをして、試合をして、お互いに研究をしている。
正直、ふたりだけの勝負ならどう転ぶかはわからない。

……ヤマトを勝たせたい気持ちがないと言ったら嘘になる。

「勝負に勝ちたい」そんなシンプルな気持ちだけじゃなくなっているんだ。


明日、REVOは開催される。

日本代表選手という
たったひとつの「世界大会への切符」を取り合うために。
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