6月の雪 ―Special Snowflake―

 私は私服に着替えると、すぐに家を出た。

 べつに食事なんてどうでもよかった。食べたって食べなくたって、どうだっていい。あの大きな家に1人でいることが苦痛だった。

 何がしたいかなんてわからない。あの家に1人でいて、何かを考えるなんてできなかった。

 家のインテリアも、食器も、外すことが面倒になっている家族写真も、すべてがママで、きっと考えることはママのことばかり。今の私には楽しいと思えることを考えられる気がしなかった。

 夜の街へ飛び出すと、そこは何も変わらない街。

 またいつものようにファミレスか、それともファストフードか……。1人でカラオケなんて行ってもつまらないか……。

 フラフラとただ歩くだけの数十分。なんの当てもないまま歩き続けることも、その意味も何もない。こういう時、SSFへの依頼者のことを考える。
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