就寝の準備をして寝室に入ると、結子の姿に気付いた奏一が顔をあげてにこにこと微笑んだ。

 ここ数日、いつもこの笑顔だ。結子に触れたことがそんなに嬉しかったのだろうか。元々他人に対する物腰は柔らかい人ではあるが、あの夜から余計に優しくなった気がする。というか、甘さが増した気がする。幼い頃にいじわるをされていた印象とはずいぶん違う。

「結子、ちょっと来て?」

 読んでいた本をパタンと閉じて結子を手招きする顔は、確かに人懐こい少年がそのまま成長したようにも思える。

 けれど仕草が全然違う。結子を見る目が昔とはあまりにも違う。数日前に『可愛いお姫様のイメージ』と言われたときは『本当にそんなこと思ってた?』と疑問が湧いてしまったが、彼の今の態度は本当に結子をお姫様扱いするようだ。

「はい、座って」
「え、座るって……そこに?」
「そう。ここに」

 奏一が示す『ここ』は、彼の脚の間だった。長い足を軽く折り曲げ股を開いた場所へ腰を下ろすように言われて、結子は狼狽してしまう。もちろん服は着ているが、人の股の間に座るとは一体どういう状況なのか。

 困惑して棒立ちになっていると、身体を起こした奏一に手首を掴まれてぐいっと腕を引っ張られた。力強い手に誘導されると、彼の望み通り脚の間に座る羽目になる。