雪と虎

都内では、何年ぶりかの大雪だと言っていた。地元で毎年雪は見ていたけれど、まるで異世界みたい。

それにしても、朝からずっと左瞼が痛い。古傷が痛むってやつなのかも。

寒さで時折引き攣る時はあったけれど、こんなに痛いのは久しぶりだ。

送迎の車は勿論遅れている。
雪だから早めに大学内も閉める、という放送も入ってしまった。

「あ、水薙さん」

学生ラウンジから出てきた同じ学科の森野(もりの)くんがこちらを見た。

「授業終わり?」
「うん、さっき」
「電車動いてる?」
「どうだろ?」

車での送迎ばかりなので電車を気にしたことは無かった。

< 33 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop