現実主義者の恋愛事情・王子を一時預かりします  レイと綺麗

王子との別れ<38~42>

後朝(きぬぎぬ)の別れは・・・

愛し合った次の日の朝は・・
とてもじゃないが、
ロマンチックではなかった。

「もう、仕事は責任があるんだよ。
ちゃんと行きなさい」

「キレイさんと一緒にいる!!
仕事はキャンセルする・・」
王子は、ふとんをかぶってすねている。

「ほい、手ぇ出して。
指、湿布するから」
綺麗が布団の端に正座して、
救急箱を開けた。

王子はまだ布団をかぶっているが、端から手だけ出した。

指がまっすぐで、長くて・・
大きい。

綺麗はちょっと・・
ぞわぞわしてしまった。
ああ、この人の手が・・・
触れたのだ。

むむむむむーーーん

確か、フランス、ドイツ、
イタリアと言っていたな・・・

3人の彼氏・・・
彼女も混じっているのか?

綺麗は深呼吸して、湿布薬の袋を破いた。
強い薄荷の匂いが、現実に引き戻す。

「少し腫れているけど、
念のため整形外科に見てもらってね。
指は大事だから」
そう言って、
手早く湿布を巻き付け、伸縮包帯で止めた。

綺麗は時計を見た。
もうすぐ高梨が迎えにくるはずだ。
余計な詮索はさけたい。

あいつのおもしろがって、
ニヤける顔は見たくない。

「行かない・・
キャンセルするから」
王子は手を引っ込め、布団で丸くなる。

ああ・・・・・

これは不登校の息子に困る、
おかん状態ではないか・・

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