激しい雨音に起こされる目が覚める 。時間を確認するとまだ真夜中で、隣で眠る未亜はまったく起きる気配がない。

 それどころか、うっすらと笑みを浮かべ幸せそうな顔をしている。

 その寝顔があまりにも可愛らしく俺は静かに彼女に口づけた。

 続けて隣の子ども用ベッドを確認すると、茉奈もよく眠っている。

 体勢を戻し未亜を改めて自分の腕の中に閉じ込めた。彼女のあどけない寝顔は、出会った頃から変わらない。

 かく言う自分は未亜に会って大きく変わった。

※ ※ ※

 父親はアメリカに本社を置く大手電気製品メーカーで長年勤め、日本法人を立ち上げ代表取締役となった。

 世襲制ではないはずだが、俺は生まれたときから勝手に父の跡を継ぐことが既定路線だった。

 元々要領はいい方で、与えられた環境に恵まれていたこともあり、勉強も運動も人間関係さえ特段苦労した覚えはない。

 優秀だと褒められても、ふた言目には『さすが次期社長だ』『お父さんの後を立派に継げるね』がお決まり文句だった。

 それをいちいち面白くないとふて腐れるほど、子どもでも感情的でもない。上手くやり過ごす術だけが身についていく。

 逆に言えば、なにかに無我夢中になったり、なりふりかまわず真剣になった記憶もほぼなく、我ながら打算的で冷めた人間だった。

 アメリカに留学し、本体のラグエル本社に出入りしつつ一年ほど日本に帰国することになった。