嘘と、恋。
観覧車と、初恋。
朝起きると、昨日の朝と同じように康生さんはもう隣に居なくて。


その姿を探すようにベッドから出てリビングに行くと、康生さんはソファーに座りテレビを観ていた。


「あ、まりあちゃんおはよう」


爽やかな笑顔。


昨日の、父親を殺した話なんて嘘なんじゃないかって、その顔を見ていたら思ってしまう。


「おはようございます。
康生さん、起きるの早いですね?」


そう言ったけど、もうそれ程早い時間ではないのかもしれない。


テレビに映る時間を見ると、10時を回っている。


私、すごい寝たんだな。


「今日、俺予定ないから。
1日中まりあちゃんと一緒に居られるよ」


「え、本当ですか!」


そう言った声が、自分でもビックリするくらい弾んでいて。


私、それが嬉しいんだ、と気付いた。


「だから、まりあちゃんとどっか行こうかな?って色々考えてて…。
で、ほぼほぼ決めた」


「どこですか?」


康生さんの隣へと腰をおろし、
その顔を覗き込む。


すると、ニヤリ、と笑い、秘密と言われた。


『―――続いては、先日S県のN市のアパートで、この家に住む結城里江さんと、その交際相手である坂本光太さんが何者かに殺害された事件。
二人の交遊関係等捜査を広げ。
殺害されたと思われる時刻、付近で目撃された白いセダンの持ち主の特定を、急いで――』


テレビでは、またその殺人事件のニュースが流れていて。


此処に来た時に見た時から、特に進展はないみたい。


犯人どころか、その時間帯に現場付近で目撃された、不審な車が誰のものなのかさえも分かっていない。


『―――その事件後、行方不明になっている、被害女性の長女の安否も気になりますよね』


そう、テレビの男性キャスターは言葉を続けた。


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