「悲劇のヒロインぶっていてもなにも変わらない」


見惚れそうになるほど整った面差しの男性が、冷めた目で私を見つめる。

完璧な弧を描く口元から紡がれる声に不機嫌さがまじる。


「失恋の原因でも考えているのか?」


小馬鹿にしたような口調が腹立たしい。

骨ばった長い指が私の頬に触れ、泣いて乱れた髪を耳にかける。


「俺と結婚しよう」


甘い蜂蜜のような声が鼓膜を震わせる。

 
とんでもない誘惑に息を吞んだ。


「お前を甘やかして、守りたい」


色香の漂う眼差しから目を逸らせない。


「俺の後継者をお前に産んでほしい」


自分勝手な願望に眩暈がする。


沙也(さや)、お前の全部をさらけ出して俺のものになれ」


ありえないと反論する私の必死の抵抗は――彼の唇にふさがれた。