寝室のベッドですうすうと穏やかな寝息を立てる沙也の柔らかな体をそっと抱きしめる。

髪を指で梳くとさらさらとこぼれ落ちる。

華奢な体つきがほんの少し丸みを帯び、懸命に命を育んでくれている沙也がなによりも愛しい。


――失わずにすんでよかった。


ほんの数時間前の出来事を思い出すだけで、冷や汗が出そうになる。

思考が停止して、恐怖で手が震えそうになるなんて初めてだった。

怖いものや心から欲するものなんてなにひとつなかったはずの俺が見つけた、たったひとつの宝物。

今はもう、沙也のいない人生なんて考えられないし想像すらできない。

言葉足らずな俺のせいでどれだけ傷つけ、不安にさせただろう。


「……本当に悪かった」


頬に指で触れ、耳元で小さく囁く。

すると沙也が俺の指に、そっと頬を摺り寄せる。


「沙也?」


起こしてしまったかと名を呼ぶが、妻の瞼は閉じられたままだ。

無意識らしい行動に愛しさがなおこみ上げる。


「……これ以上俺を惚れさせてどうする気だ?」


こんな幸せな独り言をつぶやく日が来るなんて想像もしていなかった。

保と兄には今日の一件について謝罪と礼を改めて伝えた。

歩佳には後日ふたりで連絡するつもりだ。


なあ沙也、知ってるか?


お前だけが俺の心を揺さぶるんだ。


俺と出会って、俺の子どもを身ごもってくれてありがとう。


この先、一生俺がお前を甘やかして愛し続けると誓うから。


ずっと傍で笑っていてほしい。


「お休み、沙也」