「――で、結論はでたの?」


昼休みの食堂に塔子の落ち着いた声が響く。

週明けの月曜日。

重い体を引きずって出社すると、朝一番で総務課にやってきた親友に事の次第を説明するよう求められた。


理解に苦しむプロポーズの直後、今度こそ帰宅しようとした私を、彼はなぜか自宅まで送ると言い出した。


『ひとりで帰れます』


『大切な結婚相手をこんな時間にひとりで帰らせると思うか?』


『まだ十時前ですよ? それと結婚相手じゃありません』


繁忙期は十時を過ぎる日だってあるし、ひとりでこのくらいの時間帯に帰宅した経験は何度もある。


『十分遅いだろ』


私の発言を否定した彼は、スーツの胸ポケットからスマートフォンを取り出し、どこかに連絡をしだす。

その後私とともに個室を出て、風間さんに私を送る旨を伝えた。

当たり前のように私の身を案じる姿に、なぜか胸の奥がくすぐったくなった。

まるで自分がこの人にとって大切な存在なのだと勘違いしそうになる。

さらに彼はずっと私の手を繋いでいた。

その状態を目にした風間さんは軽く目を見開いた後、ニッと口角を上げた。

店の前にやって来たタクシーに乗せられ、おのずと彼に自宅住所を教える状況に陥った。

まんまと彼の罠にはまっている自分が情けない。

タクシー代金も彼がさっさと払ってしまい、支払いを受け付けてくれなかった。