日直当番【完結】
 進藤くんはいつもクソ真面目で完璧主義な優等生のくせに、昨日の進藤くんはそんな印象を覆すようなエロティックな雰囲気をまとっていた。あれはきっとみんなが知らない彼の顔だった。まるで別人のようにあまりにも違いすぎて困惑してしまう。

意表を突かれた。不覚にもあの進藤弥也にドキドキしてしまうなんて。進藤くんの耳の奥に響くような甘い声が、思い出したくもないのに耳にこびりついて離れない。

「ウソだウソだウソだあぁ!!ううぅ…」

「――――捺乃?」

「!!」

いつの間にか来ていた由理の声で我に返った。

「小論書いてる途中でトリップすんなよ。なんか今日の神崎おかしくね?」

「なんかあったんなら相談に乗るよ?」

 私は皆川と由理の顔を交互に見てから机に置かれた小論文を見た。

「んーん、大丈夫だよ。なんでもないから」

 早く小論文を仕上げなければ!

休み時間中にふたりにアドバイスをもらいながら書いたおかげで、その日のうちに小論文を書き上げることができた。半ば上の空になりながら。
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