無理、俺にして
たとえばの話

「……っ」

ここに来るのは二回目だというのに、あの時とは色々と状況が違いすぎて

初めて来たときよりも緊張する。


――ガチャ


「っ!!」


ドアの鍵を閉める音。

折原くんが以前説明してくれたことをちゃんと覚えてはいるけども、やっぱり少しドキドキする。


「あのさ、だからそう身構えんで」


私の体が強張ったことに気付いた折原くんは、ふうと息を吐きながら優しく笑う。


「……折原くん、私」

「……ん」


その当たりの椅子に腰掛けて、頬杖をついて。

優しい視線を私に向けてくる。

ああ、もう。

ひとつひとつの仕草がかっこよくて、こんな大事な時ですらいかがわしい妄想がもんもんと湧いて出てくる。


ぎゅっと、丈の長いTシャツの裾をつかんで、ゆっくり深呼吸。


ちゃんと頑張れ、ゆめ!!


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