慶ちゃんが抱いてくれない!
将来 ~慶次side~






1年後。








高校の卒業式から大学の入学式まで俺と真穂はかなり忙しいスケジュールになっていた。





高校の卒業式を終えた次の日、すぐに俺と真穂と兄貴と南條は4人でドイツへと向かっていた。





卒業旅行というわけではない。






実は、真穂の18歳の誕生日に俺と真穂は籍を入れていた。






まだ親のすねをかじっている高校生の分際ではあるが、真穂の寿命の事もあって自分の両親と真穂のお父さんに何度も頭を下げて大学も卒業する事を条件に結婚を許してもらった。





放課後にアルバイトをして真穂のおばあちゃんの家を使わせてもらって既に真穂と二人で家事や食事を協力して生活をしていた。
家賃は真穂のお父さんが大人が結婚する時でも親が用意した家に住む事もあるから気にせず将来の為に貯めておきなさいと言ってくれて、だいぶ良い環境で真穂との結婚生活を送っていた。





そして身内だけのかなり小さい物になるが、高校卒業して大学入学までの春休みの間に結婚式も予定していた。





結婚式に真穂のおばあちゃんも呼びたいと話していた時に、ドイツに住んでいる真穂のおばあちゃんの知人から手紙で数年前に亡くなっていたとの訃報が届いた。


フランスに住んでいると聞いた事があったが、いつの間にかドイツに移り住んでいた。
生前真穂のおばあちゃんが住んでいた家の片付けをしていた時に日本に親戚がいる事を知って知らせてくれたらしい。





その訃報を受けて俺達は結婚式をする前に真穂のおばあちゃんのお墓参りに行く事になった。





手紙をくれた真穂のおばあちゃんの知人は全く違う場所に住んでいたようで会う事はなかった。真穂のおばあちゃんが生前に住んでいたのはドイツにある人の少ないのどかな田舎町だった。





生前住んでいた家を管理している人によると周りとほとんど関わりを持つ事もなく、一人で静かに息を引き取っていたそうだ。
兄貴がドイツ語のいつの間にか勉強もしていて全部通訳をしてくれて助かった。





お墓参りを終えると、真穂は一人真穂のおばあちゃんのお墓を見つめていて涙を流していた。
俺は静かに真穂の隣りに行って肩を抱いて寄り添う。





「時間掛けちゃってごめんね……もう行かないとだよね」

「もう少しくらい大丈夫だよ」

「……おばあちゃん、とても長い人生お疲れ様。ゆっくり休んでね。お母さんを生んでくれてありがとう」




真穂は目を閉じてお墓に手を当ててそう言った。




そんな真穂の姿を見て、俺も真穂のおばあちゃんのお墓に真穂の事を最後まで精一杯愛する事を誓った。





日本に帰国後、すぐに俺と真穂の結婚式が執り行われて籍は既にいれていたが、式を終えると改めて夫婦になった実感が湧いた。




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