ハルカはもう一度、財布を紛失した日の記憶をたどった。紛失があまりに大きな出来事だったため、てっきりその際にスキミングされたとばかり思っていたが。考えてみれば、あの日財布を手放したのは、その時だけではなかった。
 ――ジムの、ロッカー。
 鍵がかかることで油断したハルカは、財布をロッカーに入れて、エアロビのレッスンに参加したのだ。だがスタッフなら、マスターキーでロッカーを開けられるではないか。
 ハルカは、あの日対応した笹原という女性のことを思い出していた。ハルカが参加するレッスンの所要時間を念押しし、使うロッカーを指定した彼女。ハルカがレッスンに参加している間にロッカーを開け、スキミングしたのだろうか。それこそ、彼氏か誰かのために。
 ――そういえば彼女、あの後すぐ辞めた……。
 ハルカは、思わずため息をついた。怒りや悲しみからではない。君島が無実だったことに、ほっとしたのだ。
 ――クリスマスデート、OKって言わなくちゃ。
 ハルカは、いそいそとスマホを手に取ったのだった。             了

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