ずっと探していた人は
「昼飯食おーぜっ!」

中川くんはそう言って、素早くお弁当を開ける。

昼休み、私たちはそれぞれお弁当をもって、由夢と中川くんの席に集まった。

中川くんと由夢の席が隣になってから、私たちは休み時間、いつもここに集まる。

中川くんは、「いただきまーす」と言いながら、ガツガツ食べ始める。

「お腹減った~」

私もお弁当を開けながら、チラッと大橋くんを見ると、大橋くんはだまってサンドウィッチを食べ始めていた。

「大橋くんはパン派?」

何か話したくて、声をかける。

「え」

話しかけられると思っていなかったからか、それとも違うことを考えていたからなのか、大橋くんは驚いてこっちをみた。

「お昼ご飯、パン、多くない?」

「あ、確かに! あんまりお弁当持ってきているイメージないよね」

私の問いに、由夢も、うんうん、とうなずく。

大橋くんは一度自分の手元を見てから、「ああ」と答えた。

「お母さんが、パンの方が好きだから」

「お母さんが?」

「うん、お母さんが自分のお弁当を作るときに、俺のも一緒に作ってくれるから」

「そうなんだ」

「大橋の母ちゃん、幼稚園の先生なんだぜ」

中川くんがご飯を掻き込みながら言う。

「へえ~! 幼稚園の先生!」

「いいなあ、私子ども大好き」

由夢がうらやましそうに大橋くんをみる。

「だってお前、子どもみたいだもんな!」

精神年齢低いから子供と気が合うんじゃないのと徹が言うと、由夢以外のみんなが笑った。

「はあ? あんたにだけは言われたくない!」

「まあ、どっちもどっちだな」

中川くんがあきれた様子で言うと、2人から言い返されて、その様子が面白くて私と大橋くんは思わず吹き出す。

だから、気が付かなかった、教室が騒がしくなっていたことに。

「かーれんっ」

肩を叩かれて振り向くと、いつもと雰囲気が違ったから、一瞬誰だかわからなかった。
< 27 / 155 >

この作品をシェア

pagetop