ずっと探していた人は
「なんか、すごいね」

「なにが?」

「大橋くん、えらいなあって」

「そうかな?」

首をかしげる大橋くんに、私はうなずく。

「うん、私はランニングとか絶対嫌だもん」

私の言葉に大橋くんが笑う。

「けど、これも、滝川さんのおかげ」

「どうして? 今回も何もしてないよ?」

そう答えると、大橋くんは首を振った。

「俺がつらい時、話聞いてくれたから」

「話、聞いただけじゃん……」

あの時、悩んでいる大橋くんに、何の言葉もかけられなかった。

努力している人を目の前に、何もしていない自分が、言葉をかけることなんて出来なかった。

「見てるよ、って言ってくれたでしょ!」

「それは、言ったけど…………」

そんなの当たり前だ。
友達が努力している姿を、見守ってあげることなんて、誰でもすると思う。

それでも大橋くんは続けた。

「自分の努力が報われなくても、自分の努力を認めてくれる人がいたら頑張れるんだ」

大橋くんは、大きく深呼吸すると、にこりと笑った。

「俺、頑張るから。マウンドに登るときは、応援に来てね」

今までの中で一番激しい音が鳴り響き、二人とも夜空に視線を移す。

今晩打ち上げられた花火の中で最も大きい花火が、私たちを見守るように空から降ってきていた。
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