敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
天国と地獄
入籍して三日目、大地先輩はパリへ飛ぶため、朝早くに出社した。

彼とひとつのベッドなのに私は寝たふりをして、おはようの挨拶どころか見送りさえしなかった。

大地先輩は四日後の夜に戻ると言っていたけれど、すでに生きた心地がしない。

国内線も国際線も乗務するエアラインパイロットで副操縦士の彼のスケジュールは不規則で、たいていは数日間の勤務と数日間のオフを繰り返すようだ。

航空法で一カ月の乗務時間は百時間、三カ月で二百七十時間、一年で千時間までと定められていて、だいたいひと月あたりは七十時間前後になるそうだ。私はこの先、それくらいの時間不安に襲われるのだと思うと、目の前が真っ暗になった。

自分も仕事があるからもぞもぞと起き、彼がいなくなった部屋で身支度を整えて朝食を摂る。

……だめだ、パンが喉を通らない。

寝室の引き出しの一番奥から、ジップ付きのビニール袋を取り出した。中には中学生のときに大地先輩にもらったレモンティーの紙パックとストローが入っている。

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