君を好きでいたこと



気づいてたんだ。
お互い思い合っているはずなのに、段々と心の距離が離れてたこと。
些細な喧嘩が増えて、仲直りをして、だけどその度に、祥平の笑顔が曇っていったこと。
だけど、素直じゃないわたしはそれに気づかないふりをした。
あのときなら埋められたはずの小さな溝が、崖のように大きく深くなるほど……。


きっともう、付き合い始めたころになんて戻れないんだよね。


なんでだろう。
初めはあんなに祥平のことを知りたいって思ってたのに、今は知らなければよかったと思うことばかり。
祥平のいやだと思ってしまうところ、傍にいなければ気づかなくて済んだのに。


わかってるよ。
こんなわたしのワガママが、二人の間に壁ができた一番の理由だって。
いつからかわたしと居るときの、祥平のため息が増えた。
一番最後の笑顔なんて、全部が偽物ってくらい悲しそうだった。


祥平の笑顔を取り戻すには、わたしから離れなきゃって何回も思った。
だけどできなかった。
どうしても傍に居たかったの。
大好きだから。


けど、そうしていくごとにわたしの心も祥平の心も軋んでいって、限界まできたからのあの日の喧嘩なんだと思う。
高一のバレンタインで付き合い始めてから半年ちょっと、告白したのはわたしから。
だけど、あの頃は確かに二人の気持ちが繋がっていたと思える。
お互いがお互いを想いあっていて、その気持ちがお互いにわかっていた。


だけど今は違う。
祥平はきっと辛かったんだろうな。
受験勉強も、テニス部の部長の重圧もあったのに、わたしのワガママも全部背負ってくれてた。
ようやく真面目に進路を考え始めて、部活も三年生から引き継いだ今になって、どれだけわたしが祥平に勝手なことばかり言ってたかを気づいたんだ。

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