高嶺の社長と恋の真似事―甘い一夜だけでは満たされない―


「まぁ、顔がよくてお金も持ってて、しかも手掛けてる仕事が波に乗ってて話題性もあるからモテるはモテるんだろうけど、上条さんは美波が感じている以上にきちんと想ってくれてるよ。だから、信じてみてもいいと思う」

ショートケーキを食べながら言われる。

「話題性……」
「うん。雑誌にも載ってたし、テレビの特集でも一番長く取り上げられてたから、きっと数カ月は混むんじゃないかな。私もフレンチのお店見たけど、あれ、一軒家でしょ? 隠れ家チックでデートにも女子会にもよさそうだし、店内の雰囲気から見ると年齢も選ばなそうだなって思った」

たしかに、おしゃれなフレンチやカフェのオーナーという肩書はモテる要素かもしれない。

その辺をあまり気にしたことはなく、ただ、経営手腕があるのだなぁ程度にしか思っていなかったけれど、雑誌やテレビに取り上げられたなんて話を聞けばそう呑気な感想を抱いている場合でもなくなる。

お父さんの仕事が流行に左右されるからか、桃ちゃんはいつも美容はもちろん、アイドルグループや家電までトレンドに敏感だ。

桃ちゃんが教えてくれる情報を、ただなるほどと感心しながら聞いて、並んだスイーツの六割ほどを平らげる。

甘いものは好きだけれど、さすがにこれ以上は胃が悲鳴をあげそうだな、と考えていたとき、桃ちゃんが「んーと、美波。それでね?」と伺うように私を見た。


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