この政略結婚に、甘い蜜を
5、淡い初恋
鍵宮グループは、日本だけでなく世界にも進出している大きなグループである。そんなグループの次男として、零はこの世に生まれた。

生まれた時から、富も地位もあり、華やかな世界で零は生きていた。ほしいものは何でも手に入り、大人でさえも幼い自分に低い姿勢で話しかけてくる。そんな華やかな世界がどこか滑稽で、零は豪華なパーティーなどを幼い頃は楽しんでいた。

だが、ある時気付いてしまったのだ。この世界は華やかだが、とても冷たい世界だということを……。

「あなたたち、鍵宮グループの御曹司に絶対に気に入られるのよ!そうすれば私たちの家は安泰だわ」

「これはこれは、鍵宮グループのお坊ちゃん。今日も素敵な装いで」

「零くんって、スポーツも勉強も何でもできて、とてもかっこいい!」

「父さんがお世話になってます。よかったら、仲良くしてくれないかな?」

年を重ねるごとに、零は徐々に気付き始める。みんな、鍵宮グループという大きな宝に少しでも近付きたいだけなのだと。自分のことなど、誰一人として見てくれてはいないということに。
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