俺の世界には、君さえいればいい。
*隣クラスの婚約者*
世の中は不思議なことで満ちあふれていると思う。
不思議というか、ありえないことの連続だ。
「ーーーい、ーーなの、由比 かなの!!」
「───あっ、はっはい…!!」
ぱちっと目が覚めると、そこはいつも通りの授業風景。
窓から吹き抜ける9月半ばの心地いい風に眠り呆けてしまったらしく。
「俺の授業で居眠りとは…いい度胸だなぁ?」
「す、すみません…っ!」
寝てないです、まぶたの裏側を見ていただけです───。
そんなことを、昨日たまたま見ていたテレビでタレントさんが笑いながら言っていたような気がする。
けれど私にはそんなことを言える勇気だってなく、担任の刺すような視線とクラスメイトのくすくす声に耐えられず真っ赤。
そりゃあ地味で目立たない私の珍しい姿なんか面白いこと極まりないよね…。
「どうしたのかなの。最近ボーッとしちゃって。なんかあった?」
「…髪切った?みたいなノリで聞かないでゆっこ」
「では何かございましたでしょうか!」
そういう問題じゃない。
言い方を変えればいいってことじゃないのに…。