跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
その惚気、業務の範囲外ですから!
七月も半分が過ぎた今日、千秋さんと私は岐阜入りするために新幹線のホームに立っている。

一カ月ほど一緒に暮らす中でそれなりに打ち解けてきたから、ふたりきりのこの状況もさほど緊張はしていない。むしろ大好きな岐阜に行けるのだと、仕事にも関わらず内心は浮足立っている。

新幹線に乗り込むとすぐに、千秋さんはなにやら資料を取り出して読みはじめた。折り畳みのテーブルには、パソコンまで開いている。別に会話を期待していたわけではないものの、少しだけ残念な気持ちになってしまった。

移動中にも仕事をするなら邪魔をしてはいけないと、あきらめて窓の外を眺める。

途中で富士山が見えたときには、はしゃいだ声を上げそうになったが耐えた。
目新しいものなんてほとんどないのに、隣に誰かがいるとちょっとしたことでつい話しかけそうになってしまう自分は、やはり子どもっぽいのだと密かに落ち込んだ。

長いトンネルに入ったと同時に窓に千秋さんが映し出され、思わずまじまじと見てしまう。
私の旦那様は、黙っていればちょっと強面気味のイケメンだ。わずかな隙もなく、上に立つ人特有のオーラをまとっているのは誰の目にも明らかだろう。

けれど仕事のときはきっちりとセットされた髪も、家でリラックスしているときには柔らかい雰囲気になると私は知っている。

< 48 / 174 >

この作品をシェア

pagetop