一途な部長は鈍感部下を溺愛中
番外編

東雲聖が恋をした日



番外編1 東雲聖が恋をした日
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「はい、頼まれてた資料です」


クリップで留めた紙束を、木目調のテーブルに放る。


一般社員とは違う、革張りのチェアに深く腰かけた男はニコニコと微笑みながら、ぞんざいに扱われた資料を手に取った。


「おお、ありがとう。ごめんね、急に頼んじゃって」

「本当に、人使いの荒い社長様なことで」


嫌味で返すも、柔和な笑顔で封殺される。


やれやれと一つため息をついて、俺は備え付けのソファーに座った。


「……うん。よく纏まってる」


穏やかな雰囲気とは裏腹に、素早く中身を確認した男がそう言って机の端に資料を置く。


特に訂正がないならそれでいい。立ち上がり、社長室から出ようとしたところで「ところで」と背中に声を掛けられた。


その声色がどこか揶揄うような色を含んでいて、苦い顔になりながら振り向く。


「……何か」

「少しくらい世間話に付き合ってくれてもいいじゃない。こうも部屋に一人きりだと退屈してしまうんだよ」


絶対そんなわけないだろと思うが、多分何を言っても逃がしてくれないだろう。俺は肩を竦め、またソファーへと逆戻りした。


「……で、社長様はどんなお話をご所望ですかね」

「そりゃあ、君が取り仕切る人事部について……中々上手く機能しているようだね。そろそろ異動希望者を断り続けるのも苦しくなってきたよ」


そう言って、全然苦しくなさそうな顔で顎を摩る男を睨む。


「俺の許可なしに決裁しないで下さいよ」

「したって、すぐに君の一存で飛ばしてしまうくせに」


意地の悪い顔で笑われ、ふん、と鼻を鳴らした。


当然だ。それを条件に、この会社へのスカウトを引き受けたのだから。


「しかしこうもあっさりと建て直してしまうとはねえ。優秀なのは分かってたけど、期待以上だったなあ」


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