両親のことをはじめ、全てが良い方向に動き始めたと思っていた。

しかし、突然に不安な出来事は舞い込んでくるものだ。

今日は朝から秘書課の女性たちが集まり、何かザワザワとしている。
いつもなら、気にしない私だが、なぜかとても気になり近づいてみた。

すると、深山絵里が私に話を伝えてくれた。


「みんな謎の金髪美女に大騒ぎなんですよぉ。」


絵里はいつも通りの甘えた話し方で口を尖らせた。


「金髪美女?」


絵里はコクコクと頷いた。


「なんか、神宮寺社長の秘密の恋人じゃないかって言う人が居て、その女性と一緒に居るところの写真も撮った人が居るんですよぉ…ショックですぅ。」


悠斗さんと私の関係はまだ会社の人達には伝えていない。
知っているのは、秘書の須藤だけだ。


「ど…どんな…写真なの?」


私は両手にグッと力を込めて握り、極力平静を装った。

すると、絵里が転送してもらったという写真をスマホで見せてくれた。


「これなんですよぉ。昨日の夜に偶然、社長が車から降りるところを、写真で撮った社員がいて、秘書課のメンバーに送ってくれたみたいですよ。」


…確か…昨日は古い友人と仕事の話で遅くなると言っていた。
しかし、平日は一緒に住んでいないので、詳しい事はわからない。

絵里から見せられた写真には、車から降りる悠斗さんと、一緒に手を引かれて降りる金髪の女性が写っていた。

写真は数枚あり、車から降りた悠斗さんは、その女性の腰に手を回して優しくエスコートしながらレストランに入っていくところだ。

女性の顔はよく見えないが、女性は体にフィットするワンピースを着ており、かなりスタイルが良いのが分かる。
金髪のロングヘアーは柔らかいウェーブで、写真でも艶々と輝いているのが分かる。

両手が冷たい。私は平静を装うために、両手をさらにグッと握りしめた。
心臓を誰かに鷲掴みされたような苦しさが襲ってくる。


「伊織さん、なんか顔色悪いですよ…社長のことで驚き過ぎたのかも知れないですね…私もショックで目の前がクラクラしますぅ。」


絵里は口を尖らせて怒っているようなポーズをしているが、大好きな噂話に嬉しそうでもある。