アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
鳳雅の告白
『━━━━━じゃあ、また明日ね、四葉』
「うん!なんだか、夢みたい!
揚羽くんと、デートできるなんて!」

その日の夜。
揚羽と四葉は、通話していた。
いつになくハイテンションな、四葉。

でも揚羽は、複雑だった。

鳳雅の覚悟を聞き、少なからず動揺していた。

確かに鳳雅が言った賭けは、揚羽にとって魅力的なことだ。
これなら、きっと…揚羽も堂々と四葉を妻に迎え入れることができる。

しかし果たして、四葉は鳳雅の言う“覚悟”を決めることができるのだろうか。


『四葉』
「ん?」

『お願いだから……』
「え?揚羽…くん…?」

『僕を……僕だけに“幸せ”をちょうだい』
思わず、弱々しい言葉が出る揚羽。

「揚羽くん」
『ん?』
「好きだよ」
『うん』

「大好き!揚羽くんから離れないよ!
私のこと、拐ってくれるんでしょ?
私、揚羽くんが傍にいてくれるなら、何処でもついていくよ!だから━━━━」

『うん!ありがと!
ずっと、傍にいるよ!』
「うん!」

『ずっとね………』


次の日━━━━━━━━

「おはよう、鳳雅くん!」
満面の笑みで出てくる、四葉。

錯覚しそうになる……

勘違いするな!
この笑顔は、俺ではなく揚羽に向けられたモノなんだ。

頭を振り、四葉に微笑んだ。
「行こうか」
「うん!」

手を差し出すと、小さく握ってきた四葉。

できることなら、このまま揚羽に会わさず連れ去りたい。

邪推な考えばっか、頭に浮かぶ。


車に乗り込む。
「四葉」
「ん?」
「揚羽が、ホテルで待ってる。
外はあんまり歩かない方がいいから、部屋で二人でゆっくり過ごしたいって」

「うん、わかった!」

「少し、早めに迎えに行く。
俺ともデートして?」

「うん!
私も、お礼したいし!」
「え?」
「だって全部、鳳雅くんのおかげだもん!
だから、どこかでお茶しよう!
わたしの奢りだよ!」

「あぁ、わかった」


ホテルに着き、降りた四葉。

「じゃあ、15時にここで!」
窓を開けて言った鳳雅に、四葉は“ありがとう”と言って頷いた。
そして小さく手を振り、鳳雅の車を見送ったのだった。

ホテルのエントランスに入ると、揚羽がいた。

「揚羽くん!!」
呼び掛けると、揚羽がフワッと笑う。

両手を広げる揚羽に、四葉は駆け寄った。
そして飛び込むように抱きついた。

もう……これだけで、幸せだと思えた。

「四葉、四葉、四葉…」

どんなにバカげていても、二人にとってはこの瞬間がとても幸せなのだ。
< 10 / 46 >

この作品をシェア

pagetop