望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
1.出会
「君のことを愛するつもりはない。だから、君との間に子を成すつもりもない」
 それが初めて彼と顔を合わせたときに言われた言葉だった。

「はい」
 今にも消え入りそうな声で返事をした。

「知っての通り、私たちの結婚は政略結婚だ。我が国ローゼンフェルドとそちらの国ダレンバーナのな」
 彼女よりも頭一つ分背の高い彼は、腕を組み、彼女を見下ろす、いや見下すかのように言葉を放った。

「はい」

「わかったのであれば、このジェルミー公爵家の人間としてふさわしい振舞をいたせ」

「はい」

「私は仕事のため、式まで屋敷に戻るつもりはない」
 そう言い放つと、彼は部屋を出て行く。

 結局、夫となるレイモンド・ジェルミーとの初顔合わせのときに、カレンが発した言葉は「はい」のみだった。


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