望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
24.窮地
「すまない。私は先に帰る」

 と、非常に申し訳なさそうにシュンとした表情を見せているのはレイモンド。

「私のせいで君の貴重な時間を奪ってしまった」
 心当たりは非常にあるのだろう。カレンは魔導書を探しに来たはずだったのに、なぜかレイモンドとの事を続けてしまっていた。それは彼の本能によるものであるから仕方ないといったら仕方ないのだが。
 だから、レイモンドの休暇が明けるので、そろそろ王都に戻らなければならない、となっても、まだ魔導書を読み切れていなかった。

「ええ、お気になさらず。私はこちらを読んでから戻りますので」
 カレンが笑顔で言うと、またレイモンドは寂しそうな顔をする。
「すぐ迎えに来る」
 レイモンドはカレンの額に口づけをすると馬へとまたがり、この質素な家を後にした。
 帰りたくないのか、何度も振り返る。彼女はそれに笑顔で応える。そしてカレンは、彼の姿が見えなくなるまで見送った。
 レイモンドには、念のため馬の回復薬を持たせておいた。

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