その日、バウムグレン王国の王宮には、多数の人が集まっていた。王宮の庭園で、ガーデンパーティーが開かれているのである。

(……こんなにいっぱいいるとは思ってなかったな)

 爽やかなレモンイエローのドレスに身を包んだミリエラは、そっと父の手を掴んだ。

「……パパ」
「どうした?」
「──ううん、なんでもないの」

 こちらを見下ろした父が心配そうな顔をしているので、慌てて首を横に振る。

 たくさんの人に囲まれて、不安になっているなんて父に知られたくない。まるで、子供みたいではないか。

(……子供と言えば、子供なんだけど)

 グローヴァー侯爵家のひとり娘であるミリエラには、前世、違う世界で生きていた時の記憶がある。

 日本というこの世界とは違った文明を持つ世界で暮らしていたけれど、どうやら二十代後半で亡くなったらしい。子供らしからぬ思考をすることがあるのは、そのためだ。

 前世でも家族の愛には恵まれなかったけれど、今回の人生では、ミリエラが生まれた時に母が亡くなってしまった。