孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
言葉とフィーリング
それからの一週間は、大忙しだった。
リハビリテーション科スタッフによる、言語、運動、高次機能の術前評価に立ち会い、事細かに記録にまとめる。


検査と並行して、一色先生と霧生君、剣崎先生の三人と、当日のオペレーションについてのカンファレンスが、何度も行われた。
最初は、同時にオペを行う執刀医二人に、私と操がそれぞれ器械出しとして就くことを考えていたのだけど――。


「やっぱり、器械出し二人は邪魔で、動線が悪くなります。器械出しは一人の方が、効率がいいです」


操の意見に、皆が深く頷いて同意を示した。
執刀医には、それぞれ一人ずつ助手が就く。
そこに器械出しが二人就くと、患者の頭部を六人の術者がグルッと囲むことになり、かなり動きづらくなってしまう。


器械出しが一人になると、二つのオペの進行を把握し、四人からの器具の要求に敏速に対処しなければならない。
かなりの重圧を背負うことになる。
だけど。


「私にやらせてください」


私は、自ら器械出しを希望した。


「操は、外回りをお願い」

「OK。任せたわよ」


操はふっと目を細めて承諾してくれた。
予定時間九時間のオペとなると、通常、看護師には交替要員を用意する。
だけど、交替にも引き継ぎの時間を要するため、私と操が最後まで二人で担当することになった。


オペの三日前に、酒巻さんの術前検査結果が出揃った。
それを元に、チーム全員が会議室に詰めて議論する。
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