"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
彼との関係性
幸も不幸も訪れる時は突然だ。

「え? この辺り一体が ショッピングモールになるの?」

店の定休日、休みを満喫して帰ってきた矢先にそんなことを聞かされた。計画書のコピーを見せられた私は呆然とする。

幼い頃は父が営業の仕事をしていた。外回りの仕事中、横断歩道を渡ろうとした時に一台の車が人々の列に突っ込んでしまう。運が悪くも父の下半身に車がぶつかってしまい、足が不自由になった。その事故は連日のニュースでも流れ、重軽傷者三人の他に死者一人を出す大事故。

それ以来、母と二人で弁当屋を始めた。元々は祖父母が弁当屋を経営していて、母が手伝っていた。前々から引退を考えていた祖父母だったので、これを機に娘夫婦に弁当屋を譲ることにした。まだ幼稚園生だった私は両親が構ってくれない寂しさがあり、毎日のように祖父母にわがままを言って困らせた記憶がある。

「嘘でしょ? だったら、私は今まで……」

言いかけて止める。ずっと長い間、胸の内にしまっておいたわだかまりを今、ぶつけようとしてしまった。

父が仕事を辞めてからは、我が家は食べていくのが精一杯だった。私は美系の大学や専門学校も諦めた後に弁当屋を手伝っている。頭の中では分かっていることでも、内心は納得がいかなかった。
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