ABYSS〜First Love〜
ユキナリ

sideB-epilogue

リオと暮らし始めてわかったことがある。

アイツは意外にキモが座ってる。

最近は誰に隠すことなくオレにベッタリだ。

リオの親はもちろん快く思ってないが
リオとはその前から疎遠だから諦めてるようだった。

アキラさんはあのヤキモチ妬きの恋人と別れ
最近はオレの店で飲んでは荒れている。

オウスケさんがたまに遊びに来てアキラさんを慰めていたが
あの2人が元サヤに戻るのは随分時間がかかりそうだ。

オウスケさんは昔、大恋愛をして
その彼女を事故で失ったそうだ。

彼女はオウスケさんの運転する車で事故に遭い
オウスケさんだけが助かった。

その時からオウスケさんはもう誰も愛さないと決めたらしい。

適当に遊びはするが心は誰にも揺るがないように
ずっとそうして生きて来たようだ。

だから仕事に打ち込み、2度と彼女を作らなかったがそこで猛アタックしてくるアキラさんに出逢った。

アキラさんは男だったからまず惚れることは無いと最初は思ったらしい。

でもアキラさんにどんどん惹かれていく自分を受け入れられなくなって
アキラさんに冷たく当たるようになり
最後はアキラさんから離れていくように仕向けたみたいだった。

それでもやっぱり寂しかったんだろう。

オウスケさんはなんだかんだで時々アキラさんに逢いにくる。

「オウスケさん、人を好きにならないって決めたとしても心はどうにもならないですよ。

それに亡くなった彼女はそんな風に生きるオウスケさんを望んでるとは思えないです。

素直に愛してみたらどうですか?」

「オレが?コイツを?」

オウスケさんは信じられないって顔をしてるけど
実はアキラさんのことが心配で堪らないのだ。

すぐ自暴自棄になるし、酒癖は悪いし
ぶっ飛んでるアキラさんは典型的な放っておけないタイプだ。

そういう意味でリオもまさにぶっ飛んでて放っておけないタイプだった。

「リオくん、私にもサーフィン教えてくれる?」

リオは常にモテモテで女の子から海辺の王子様扱いでオレは気が気じゃ無い。

「コイツ、ゲイですよ!」

悔しくてオレが正体をバラして女の子を遠ざけると
リオは喜んでその女の子たちの前で
「この人オレの恋人!カッコいいっしょ?」
と言ってドン引きされていた。

「お前さ、ちょっとオープンにしすぎじゃない?」

「だってユキナリが言ったんでしょ?
オレがゲイだって。

それならオレがお前の恋人だって言ったっていいじゃん!」

「いや、そうじゃなくてだな。

そういうのは…もうちょっとオブラートに包んで冗談かなー?くらいのさ、わかるだろ?」

「わかんねーよ。

いいじゃん、誰に知られてももうオレもユキナリも経営者だし、誰に咎められることもないワケだから。

それにユキナリはオレの自慢の恋人なんだよ。」

恥ずかしげもなく幸せそうに笑うリオを見るとこっちも幸せな気持ちになる。

真っ暗な深海の底に埋もれかけたオレたちの初恋は
今はまるで太陽の光に照らされてキラキラと光る目の前の海のように穏やかだった。

「ユキナリ。」

「ん?何?」

リオに呼ばれて振り向いたオレにリオはキスをした。

あの日、怪我したリオに強引に奪われたオレのファーストキスみたいなキスを。

「何すんだよ。」

不意打ちを食らって焦ってるオレをみて
リオは恥ずかしそうに、そして嬉しそうに笑って
そして愛してるって言った。

だからオレも恥ずかしげもなく口にする。

「オレも愛してるよ。」

そしてまたリオは笑顔になった。



ABYSS〜First Love〜


………fin………

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