クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない

政略結婚

私の実家は1500年代にポルトガルから持ち込まれたと言われている金平糖専門店。
はなみずき製菓は私の父が社長兼職人を務め、母は経理、私と妹は販売員をしている。

釜をコテでかき混ぜる加減はその日の温度や湿度、気候に左右されるためいつ見に行っても真剣な表情で父も職人も向き合っていた。生まれ育って24年、ずっとこの光景を目にしてきた。
そんな父の姿を私は誇らしく思っていた。

しかし昨今の製菓業界は発展がめざましく、結婚式の引き菓子に使われることが多かったが今では選ばれることが少なくなっている。また、安値のものが入ってきておりはなみずき製菓のような高級金平糖はなかなか手に取ってもらえなくなっていた。
もちろん父は従業員のみんなと試行錯誤し、新たな味の開発もしている。
しかしいくら開発しても名前と味を知ってもらえないと購買に繋がらない。
販売員をしている私や妹は父に何度か営業をかけにいこうと話したが、職人気質な父はなかなか首を縦に振らない。

「いいものを作っていればわかってる人は買ってくれる」

いつも口癖のように言うが情報社会の現代では広告もなく、口伝えだけでお客さまを待っているのには限界があると思う。

もちろん固定客はついているが、高値なため毎日食べるものではなくお使い物にされることやご褒美にされることが多いようだ。

「お母さん。顧客が減ってきてるわ。私が少し営業かけに行ってみる」

経理の母にはうちの実情が1番わかるはず。

「美波、大丈夫なの?」

「うん、。断られるのはわかってるけど、このまま手をこまねいていられないもの」

私は頷くと家を出た。
今日は紺のリクルートスーツに白のシャツを合わせた。髪の毛はひとつにまとめ試食の金平糖を何種類か用意した。
お店を妹に託し、私は電車に揺られ都心へ向かっていた。
今回は結婚式場のあるホテルをまわり、挨拶をさせてもらう予定。
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