甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》
「紫乃、悪いな」
「いいよ、大丈夫。お風呂入れてもらうとずいぶん助かるから」
「寝かすのは任せた」
「お任せください。いってらっしゃい、壱」
「ん、そんなにはかからない」
仕事がどうしても終わらなかったが、紫乃と食事をするために一旦部屋に帰った。そして紫乃のために雪乃を風呂に入れてから下のオフィスに戻る。
パソコンの前で先ほどの筋トレ雪乃を思い出し、花園の家で見た紫乃の赤ちゃんの時の写真を同時に脳内から取り出すと、その脳内の紫乃に筋トレポーズをさせてみる。我ながらいい出来の画像に満足してからキーボードを叩き始めた。
1時間ほどで作業を終えて部屋へ戻ると紫乃の
「はい、もしもし?」
という声が聞こえた。邪魔しないようにそっとリビングに入り紫乃の頭をポンポンポンポンと‘た·だ·い·ま’としてからキッチンへ入る。
「うん、元気。ありがとう…雪乃も、うん…ええぇぇ?」
何だ?
「結婚?…結婚するの?…おめでとう…おめでとうだけど急で驚いた…」