義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
都心ど真ん中のこの部屋から職場までは、地下鉄を使い乗り換え一回で十五分の距離。
私ひとりで住むとしたら、もっと郊外でないと家賃が払いきれない。ドアトゥドアで通勤時間三十分以内というのはすごいことだと思う。

株式会社平海は有楽町駅の近く、賑やかな大通りから裏に入ったところにある小さな会社だ。同じような古いビルが立ち並ぶ一角にある。

「天ケ瀬さん、おはよう」

総務室に入ると、そこには同期の男子と女子がひとりずつ。今年の新入社員は私を含めて三人だそうだ。

「これから入社式と朝礼に入るからね」

総務の人事担当である課長に言われ、会議室に移動した。小さな会社なので、ずらりと集まったメンバーは50人ほど。営業所や外出の社員を含めても100人に満たないそうだ。
天ケ瀬グループから見たらとても小さな会社だろう。だけど、私が望んで入社試験を受けた会社。義兄の言うままに簡単に転職はしたくない。

入社式と朝礼はその流れで行われ、最初の二週間はすべての社内研修だそうだ。配属先はその後わかると言う。
入社式のあとから早速、総務主催の研修を受けた。同期の林田くんと狭山さんとお昼を食べ、いろいろと話す。

「小さな会社だけど、雰囲気がいいよね」

狭山さんが言う。同感だ。面接のときから思っていたけれど、社員の表情が明るい。

「新人歓迎の飲み会をしない分、研修期間中に総務が近くのホテルでランチをおごってくれるらしいじゃん」
「研修って名目だよね。気前いい~」

いい意味で現代的な考えの会社のようだ。
同期のふたりは気さくで、初日のランチですっかり私たちは打ち解けた。いい人たちでよかったとほっとする。
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