雨上がりの景色を夢見て
「…ありがとう」

高梨先生は優しく微笑んで、近くのコンビニに入り、駐車場に車を止めた。

「タオル買ってくる。あと飲み物も。何がいい?」

「緑茶をお願いします」

「了解」

車を下りて、コンビニに入る高梨先生の後ろ姿を見て、ゆっくりと深呼吸をした。

さっき、言葉にしてみて、自分でもこんなに高梨先生に心を開いていたことに驚いた。

言い返せるくらい、自分をさらけ出している。背伸びしすぎていないから、居心地がいいのだと思う。

コンビニから出てきた高梨先生を見つけて、外していたシートベルトを付け直す。

あれ…?

高梨先生が立ち止まり、近づいてきた女性と話をしている。高梨先生は、最初驚いた表情をしていたけれど、すぐに笑顔に変わり、親しげに話している。

ボディータッチが多い距離の近さから、私はすぐに察した。

きっと昔の彼女。

高梨先生が、私の方に視線を送ると、女性も振り向いて私の方を見る。

すごく綺麗な女性で、釘付けになった。そして、私はこの女性に見覚えがある。

以前見せてもらったアルバムの、夏奈さんがミスコンで準グランプリをとった時のグランプリの人。

卒業後に芸能界に入ったと言っていたから、特に記憶に残っていた。

私に手を振って、高梨先生の方を向き直し耳元で何かを呟いている。

高梨先生の顔が真っ赤になったのがすぐに分かった。

なんだろう…。モヤモヤする。







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